荒川
ゆっくり行こう。ゆーっくり。
おくちー
わかった。オッケー。
えーっとね、なんだっけ、荒川さんと話したかったことは……
荒川
もう録音されてるの?
おくちー
一応スタートしてる。
荒川
わかった!(やけにハキハキした口調)
おくちー
そんな……そっか、精度高い方がいいか。
荒川
後で文字起こしするなら。
おくちー
大変だったら無理にハキハキ話さなくて大丈夫だよ。
荒川
でもね、これはね練習しなきゃいけないんだよね。
おくちー
発声練習ってこと?
荒川
そうそう。おれ、話すのが苦手だったから……。
モソモソ喋っちゃうからさ。
おくちー
うちはあんまり口を大きく開けなくても声がなんか出るんだよね。
でも、普通人って口を開けた分だけ声出るだろうから、うちも更に口開けたらもっと声出るんだろうけど。
荒川
ね。
おくちー
小学校の合唱団の発表会の時に、妹から「智萌口全然動いてないのに声めっちゃ聞こえた」って言われたんよ。アルトやってんけど。
荒川
類稀な能力なんじゃない。
おくちー
そう!
実際あんまり口動いてへんくない?
荒川
普段?
そうかも。ロボットみたい。
おくちー
(笑)
なんかね、別になんか口を動かさないようにしてしゃべろうって思ってるわけでもなく。まあいっぱい喋るのにいっぱい口動かしたりいっぱい表情筋使うとバテてくるやん。だからはじめから省エネルギーで、マラソンを走る気持ちで喋ってんのかもしれない。
荒川
なるほど。
おくちー
いっぱい喋る前提で。
荒川
じゃ口を動かさないで、声が大きくなるように気をつける?
おくちー
いや、そうすると、表情が……
荒川
でもね、海外とか、アメリカ人とかだったら、口をたくさん動かして表情豊かに喋んなきゃ通じないような感じあるけど、別に日本語はそういう言語じゃないからさ。
おくちー
声色で全部いける?
荒川
そう。
あとは結構語尾の活用豊富やん。
なんか何でもある「やん」とか、ある「でしょう」とか、ある「じゃん」とか。
それでその言葉のキャラを表現できるわけだから。
(レモン水を飲んで目を見開く)
おくちー
確かに。
……ちょっとレモン水レモン強かった?
荒川
びっくりした。
おくちー
ごめん!
あんまり何も考えんと(レモン汁)トポトポって入れちゃった。
途中で水追加してもいいな。
荒川
そうか、そうやって徐々に薄めていくことを見据えて。
おくちー
いや、見据えてはない。足りないかもって思って入れた。
や、なんか水とか麦茶ってすごい菌が増えるんだよね。常温とかで置いとくと。
荒川
お茶が一番増えるんじゃなかったっけ?
おくちー
麦茶。
緑茶はね、
荒川
抗菌されると。
みんなあっち行くんだね。こんな時間に。
おくちー
土日……何、牛久大仏?
荒川
そんな、そんな観光地じゃないし、もうそんな仏教国じゃないよ。
おくちー
そっか。
荒川
(前の車を追い越すムーブ)
あ、今日はゆっくり行くんだった。
ずっと左(車線)いよ。
おくちー
てか、最近(歯列)矯正してさ、あとは舌の位置を調整したりしてさ、喋りやすくはなったんじゃないの?
荒川
いや、それが。
それがね、そんなことはない。まだ慣れない。
舌の動かし方がまだよくわからなくて。
いっぱい喋って習得していきたい。
おくちー
ああ、結構舌動いてる。
荒川
喋る時?
おくちー
うん、めっちゃ動いてる。
荒川
あーそうなんだ。
おくちー
タタタタタタタタって動いてる。
荒川
それがきっと脳の活性化に繋がってるんだと思う。
おれずっとさ、口ポカンと開けて舌が下に落ちている状態で生きてきたから、脳が停止してんだと思う。
おくちー
それがぼーっとするってことなのかね。
荒川
うん。
おくちー
何かね、どういう感じなのかね。
でも、「たちつてと」とかを、歯の裏にタップするように舌をタッタッてやったりするのはしゃべってる時に結構気持ちいい。
しゃべっ「て」る時の「て」とかで「タッ」て。
荒川
それが楽しいんだ。
おくちー
うん。
なんかそこでアクセントじゃないけど、なんか何て言うの、アクセントか。
英単語でもアクセントつけるとちょっと楽しいやん。つけるとっていうか強調?
荒川
そうなんだ。そういう楽しさがあるんだ。
おくちー
舌をタップさせるのは楽しいかな。
荒川
おれ、たちつてとって喋る時も、「ちつて」がもうくっついてる。
もうずっと、たちってと(「ちつて」のタンギングが希薄)。
おくちー
たちつてと。
あの早口言葉何だっけ。たけたけ?
竹立てかけたのはたてたけ?ん?言えんかった。
荒川
たてたかったからだ、みたいな。
おくちー
うん。
竹立てかけたのは竹立てかけたかったから竹立てかけた、とか。
荒川
たけたてたけ…たけたけ……竹じゃなくて盾でも良さそう。
おくちー
確かに。たてたてかけ、え?!
でも、立てかけの「たて」が
荒川
盾立てかける。
ああ、一緒になっちゃうから逆に言いやすくなるんだ。
おくちー
言いやすい。
竹の方が混じる。
それは賢いね。立てかけるの「かけ」が「たけ」になっちゃうっていう。
荒川
おれね、今ので思ったことがあって。
それは脳みそが言葉を見つけることなんだけど。
やっぱりおれ滑舌悪いからさ。今、「立てかけたかった」っていうのが言いにくいから、「竹立てかける」っていう時に舌が音を探すんよね。発音する方法を。
その発音する方法の方に脳の容量が食われてるから、「立てかける」っていう言葉がどういうひらがなの羅列だったかっていうのが考えられなくなるんよね。発音の方に意識が持ってかれて。
そういうことが積み重なっていくとさ、何か話を聞いてても「この単語なんだっけ」って、そういうことに囚われちゃうのよね。
もしいっぱい発音しててさ、その発音がもう自然に耳に入ってくる人だったら、何も考えずにすっと頭に入ってくるんだろうけど。俺はこれどういう平仮名の羅列だっけって考えるからさ。
言葉、体で覚えてないよね、文字を。言葉を舌の動きで覚えてないっていうか。
おくちー
舌の動きで覚えてることってあんのかな?
荒川
いやでももうするするっと出てるじゃん。「竹立てかけたかった」って。
おれ、「立てかける」って頭にイメージするのね、文章を。
そしたら「ああ、立てかける」だって。
おくちー
立てる+かける→立てかける。
荒川
そうそうそう。そういう風に理解するんだけど。そういう風に理解しちゃう。
でも、普通の人って発音で覚えるやん。「立てかける」って。
おれはだからそういう音としての認識だったら、多分子供みたいな感じで……「たてかける」を子供はたまに「たけかける」とか、
おくちー
何か間違えるよね。「ながぼれし」みたいな。
荒川
そうそうそう。
そういう脳みそでまだ生きているんだよね。そういうところあるかな。
おくちー
(笑)
なるほどね。
そういう間違いがうちと妹はちっちゃい時結構あったんよ。
「てんじんしゃ」とか「ぱんかい」とか。
荒川
待って、てんじんしゃは自転車でしょう。ぱんかい……
おくちー
乾杯!
荒川
乾杯(笑)かわいいなそれ。
おくちー
とか。あとなんだっけ、ビーストローフとか。
荒川
ぱいかんだったらわかるけど……。
ビーストローフ……おれそれもね結構そういうものだと思っちゃう。
何、え、ビースト……ビーフストローフ……?
おくちー
ちゃうちゃう、ローストビーフ!
ビーフストロガノフでしょそれ。
荒川
ああ。そうそうそう。
おくちー
ビーフストロガノフはこないだ食べたからね。
ローストビーフを、
荒川
なんだっけ?
おくちー
ビーストローフ。
何か雰囲気あってるからさ。で、何のことを言ってんのか分かるからさ。
でも何かそういう間違いって結構子供に多いのって何でなんだろうね。
あ、でもさっき荒川さんが言ってた理由なのか。
荒川
そう。音のふいんき。
ふいんきで世界を捉えてるんだろうね。
そういう言葉とかを50音とか表記抜きで、そういう記号化された表現じゃなくて、ふいんきで音とか世界とかを捉える。
AIが世界を表現するときにさ、日本語の看板がひらがなっぽいんだけどなんか読めない、間違ってるひらがなになってるとか、ああいうふいんきでさ。
だからもう「ち」と「さ」が似てるとか。
おくちー
あー。
荒川
なんだっけ、あれだよね。かいけつゾロリが間違えるよね。
おくちー
あー、そもそも、まず漢字で書いたら雰囲気(ふんいき)だしね(笑)
ふいんきじゃなくて。
荒川
ああー、うん……。
おくちー
それすらふいんき……。
荒川
ふんいき、ふいんき、ああー。
おくちー
「ふん」に囲むの「い」に気持ちの「き」でしょ。
荒川
あー、うん。そうだね。
おくちー
まあそれはでも逆に正しいんじゃない。ふいんきで読んでるみたいな。
正しく読まない方が正しそうな感じすらあるよね。
荒川
なんか、名は体を表すみたいな。
おくちー
うん。
ひらがなの似てる似てないみたいなの、1番わかりやすいのだと「め」と「ぬ」とか。
荒川
うん。
おくちー
「わ」と「ね」とか。
荒川
うん。
おくちー
Eテレかなんかの番組で、コマ撮りで紙粘土みたいなのでできたひらがなが書き順で書かれていくコーナーがあったんよ。
「めかぬかめかぬかめかぬか♪」って「め」か「ぬ」かわからないものが書かれていって、最後すごい焦らして「めかぬかめかぬかめかぬか……めー!」みたいな。
荒川
あー。それすごいね。
おくちー
そういうやつがあったの。
荒川
それ確かにふいんきで理解してることを、焦らすことによって「そこが違いなんだ」って気づける。
おくちー
そうそうそう。
荒川
なるほど。差異にフォーカスさせる方法。
おくちー
そういう関連で言うと、お母さんが買ってくれたしまじろうかなんかのビデオで、似てるひらがなを並べて「似てるね!」って言うコーナーがあったのね。
荒川
うん。
おくちー
でもここが違うよ、みたいな。
それで知った、今まで似てる思って無かったひらがなっていうのが、「あ」と「め」。
荒川
あー。
おくちー
「あ」と「め」が似てるっていう。
「あ」の一画目があるかないかなんだよね、「あ」と「め」の違いって。
荒川
うん。
おくちー
くるんの方法が一緒だからさ。
荒川
そうかそうか。
おくちー
そう。
でもなんか、「め」と「ぬ」はわかるけど、「あ」と「め」が似てるってその時まで思ったことがなかったからさ。
荒川
うん。
おくちー
それ見たのは多分幼稚園の時なんだけど。
「確かに似てるけど、こんなん見せられたらこれから間違うかもしれへんやん」って思った記憶がある。
荒川
ははは(笑)